
植栽について 〔暮らしの目・技術の目〕

〇暮らしの目
以前に新築させて頂いた、すまい手Aさんからお聞きしたお話です。
~Aさん宅は、隣地との境を背の高い木々と薪棚で仕切っています。「最初は薪の調達に不安があったけど、薪ストーブユーザーが集うイベント『焚人カフェ』に参加して、薪ストーブにしようと話がまとまりました」と話してくれました。今では、薪ストーブが冬の一番の楽しみなのだそうです。また、「冬が終わっても、春は庭いじりができるから楽しみが続くことに気づきました!」とご夫婦は口を揃えます。はじめは乗り気ではなかった植栽も、必要性を理解し、担当者からも熱く口説かれ、最終的には計画より多く植えることに。「庭いじりし始めると熱中しちゃって!お庭があって本当に良かったです」と奥さまが話してくれました。~
確かに薪ストーブは、薪を準備しストーブにくべることが必要ですし、煙突からは若干の煙も出ます。灰の処理や煙突の掃除なんかも避けることは出来ません。それは、庭に緑を植えることにも通じる所があり、雑草取りや落ち葉の掃除など、手間やご近所さんへの気遣いは多少なりとも必要かと。ご飯も食べるし、散歩も必要、ウンチだってしちゃう、ワンちゃんを飼う感覚と似ているような気もします。
では、なぜ、薪ストーブを採用し、緑を植え、犬を飼うのか。ここでは、それらを代表して植栽の話をしてみたいと思います。
まずは、Aさんの話にあった“植栽の必要性”とは何でしょうか。思いつくまま、いくつか書き出してみましょう。
①建物がカッコよく美しく映える
②通りや隣家から室内へ向けられる目線をさりげなく遮ってくれる
③室内からの通りや隣家への目線をさりげなく遮ってくれる
④室内から見える景色を気持ちよく豊かにしてくれる
⑤季節の移ろいを傍で感じることもできる
⑥夏の涼しさを運んでくれる
⑦そのお陰もあって、お庭も室内も気持ちよく開放的に楽しむことができる
⑧手入れをすることで、どんどんよくなる
⑨それでまたどんどん楽しくなる
⑩ご近所さんとのコミュニケーションもうまれ
⑪街並みも豊かになっていく
⑫地球温暖化の抑制にもつながる
肯定論ばかりでごめんなさい。もちろん、植栽を植えることだけでこれらがすべて成立してするのではなく、外部ゾーニングと外構全体のプラン、建物のデザインや、間取りと窓の計画など、家づくり全体のコンセプトと計画が合ってこそ、相乗効果をうみ、高いレベルで成立させていると言えるのです。
零の家づくりに根付いているのは「手の中にある人の暮らし」です。Aさんの場合、薪ストーブや植栽から、そんな、“当たり前なのだけど新しい“暮らしの充実感を、見つけられたのでしょう。
「家は小さくても庭を大きく」とか、「予算はないけどぜひ植えたい」とか、「正直、全部舗装しちゃいたい」とか、いろんな考え方があると思います。もちろん〇〇じゃなきゃダメと言うつもりはありません。でも、零では、それぞれのご家族にとって最適化を図りながらも、プラスもう1本の植樹を、きっと穏やかに、そして熱くお勧めすることでしょう。それほど、大事なことだから。(笑)
最後に、夏の日差しを遮って涼しさを運んでくれた植栽は、冬に日陰をつくっちゃたりしないの?という疑問もありますが、そんな場所には「落葉樹」を選びます。一括りに植栽とまとめてきましたが、実は、その先がとっても奥深くて面白い。
建築と自然を設計者の技術で活かす、それも家づくりの醍醐味です。
(暮らしの目本文:菊地 史朗)
技術の目(随時更新中!)
〇植栽におすすめの樹種
①コハウチワカエデ
新緑も紅葉も美しい樹種です。葉に丸みがあるため、優しい雰囲気のお庭になります。ローメンテナンスの点もおすすめポイントです。
②アオダモ
樹形が綺麗。成長が遅いため、管理も手間いらずです。シンボルツリーにもおすすめです。
(技術の目担当:星裕亮・冠伶奈)