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ZERO STAFF BLOG

2019.04.10コラム『呼び覚ます建築』

コラム『呼び覚ます建築』第5回・「例えば、コミュニケーション」

阿部 梢

コミュニケーションの難しさ

 

先日、NHK教育テレビで放送されていた「u&i」を見た。

身体・発達障がいのある子どもや外国人の子どもといった多様性の理解を深め、尊重しようと呼びかける小学生向けの番組だ。

その日は、友達とのコミュニケーションがうまく取れないときは、相手の立場に立って考えてみよう!というテーマで、なるほどと舌を巻いた。

その考え方は、どんな世代であっても大切な視点だろうと思えた。

 

現代は価値観も生き方も多様化し、今こそ質の高いコミュニケーションが求められている。

しかし、SNSなど文字のみのやり取りでは、読み違えたり、うまく気持ちが伝わらなかったりということも散見する。

対面でのやり取りであっても、解釈違いで理解し合えないこともざらである。

コミュニケーションの本質は、他者を理解しようと努め、相手とつながることだと思う。

今回は、家の中でどのようなコミュニケーションがあるのか、さらには、家を介して生まれるつながりについて、順を追って考えてみたい。

 

家の中での言語・非言語コミュニケーション

 

私が所属する会社では、部屋(room)ではなく間(space)をつくる「広がり間取り」を重視している。

2階に通じる吹き抜け、仕切りのないワンルーム、リビングから続くウッドデッキなど、家族の顔が見え、交わることができるのが利点のひとつだ。

1階と2階で会話もでき、自然とコミュニケーションが取りやすい間取りである。

ただ、コミュニケーションは、直接的な会話だけではない。

目線の動きや話すときの身振り、表情。いわゆる非言語コミュニケーションから感じられることが多くあると思う。

 

人数+LDKで、完全に個室が区切られている家では、自室にこもってしまえばその様子は分からなくなってしまうが、先述のような間取りであれば、家族の気配を感じ取ることができ、「元気がないかもしれないな」など、なんとなく様子を掴めるのではないか。

これは、幼児や思春期の子どもに対しても、また二世帯住宅や介護などで同居する親に対しても、自然とコミュニケーションを取りやすくするという観点で有効なのではないかと思う。

 

非言語コミュニケーションには、五感での知覚も挙げられる。

受験勉強をしていた頃を思い浮かべて欲しい。

例えば夜、キッチンから、コトコト、ジュージューという音が聞こえる。

机に向かい勉学に励む自分のために作られている夜食の匂いが鼻に届く。

聴覚で、嗅覚で、今作ってくれているんだな、大切に思ってくれているんだな、と感じる。

これもコミュニケーションのひとつだろう。

 

『人生最後のご馳走』という本では、

「食べることは栄養摂取の作業ではない。また、たとえどんなに質素なおかずであってもそこに思いの込められた食事は、その人にとって大切な時間で、それは「ご馳走」なのだ。」と書かれている。(青山ゆみこ『人生最後のご馳走』(幻冬舎、2015年)

 

食事の記憶は、美味しい・美味しくないに関わらず、その時の情景や感情と一緒に記憶に残るようだ。

「食べる」という行為を通じて、情愛の交感(コミュニケーション)をしているのだ。

 

 

家を介して過去・未来・自然とつながる

 

コミュニケーションの相手は、そこにいる人に限らない。

例えば、丁寧に作り込まれた造作の棚を通して、つくり手の真摯な気持ちに触れる。

建て替えの際、古材をそのまま活かすことで、その住まいの歴史を未来に引き継いでいく。

もっと言えば、無垢木材の柱や梁を通して、使われている木が育った森とつながることもできる。

 

もちろん列挙したことが全てではないが、以上のように「家」を介して行われるコミュニケーションもある。

家は、人の想いやモノや時、物語、記憶などが集積される場所でもあり、過去・未来・自然など時空を超えたものにつながる扉でもあるのかもしれない。

それらに思いを寄せ、つながろうとすることが、コミュニケーションの質を向上させ、そこで暮らすその人自身の豊かさにもつながっていくのではないだろうか。

家がそういった存在であると捉えた時、環境破壊や暗い未来につながっている家に住みたいだろうか。

自分たちが快適に暮らした後は、壊してゴミにしかならない家に住みたいだろうか。

様々なものとのつながりが喜びになるような家に住みたいと思うだろう。

そこで暮らしていく人や後世を生きる人たちに対し、健やかで豊かなつながりを持てる家を届けていくことが、私たち家づくりに携わるものの責務であり、それはきっと未来へのギフトにもなるだろう。

 

 

薪ストーブの炎の揺らめきや、パチパチと爆ぜる薪の音から、何を感じ受け取るだろう。

 

 

 

 

 

阿部 梢

【筆者プロフィール】
株式会社建築工房零 所属の広報スタッフ。東北大学4年生の時、同社インターンシップに参加。村づくりのプロジェクトにおいて、持ち前の明るさと行動力を見せ、その後入社。「森の親子ようちえん」という子育て・教育関連のイベントの立ち上げメンバーとして参画。現在は企画広報スタッフとしてチラシ、パンフレット、ホームページ等のツール作成、イベント企画・運営等に携わり、日々奮闘中。

 

 

※この文章は、『IECOCORO[イエココロ] 宮城で建てる注文住宅 』に掲載されている連載コラムの内容となっています。