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ZERO STAFF BLOG

2019.04.11コラム『呼び覚ます建築』

コラム『呼び覚ます建築』第4回・「例えば、人と人とのつながり」

阿部 梢

サンマがない、を考察する

 

〝遊びの三間〟という言葉を聞いたことがあるだろうか?

「時間・空間・仲間」のことを総称した言葉で、今の子どもには「三間がない」と言われている。

塾や習い事で「時間がない」、外遊びの機会が減り、公園でも遊びが制限され「空間がない」、みんな忙しく「仲間がない」。

そんなところだろうか。

 

また、「関係性の栄養失調」という言葉も耳にした。

様々な関係性が希薄なことで、「安定感がない」「信頼感がない」「満足感がない」状態になり、自尊感情が育まれず、大人も子どもも根無し草のようにフワフワした状態になってしまう。

これらは、現代社会を生きる私たちが少なからず感じたことのある感覚であり、課題なのではと思う。

 

この背景には、どんな状況があるのだろうか。

例えば、子どもを幼いうちから習い事や塾に通わせ、子どもは地域全体で育てるのではなく、その家族だけに責任を求めるという風潮。

もっと根本には、核家族化の構造もあるだろう。

高度経済成長期以降、職を求め、住み慣れた故郷を離れることで急速に核家族化が進んでいった。

近年はますます核家族や単身世帯が増え、より一層住んでいる地域での関係性は希薄になり、コミュニティは影を潜めていったことも背景の一因であろうと考えられる。

その中で、子どもの「三間」や「関係性の栄養失調」の問題解決のために、家づくりにできることは何だろうか。

何も、誰もが故郷で一生暮らす社会に戻し、地縁血縁を第一にしようと言いたいわけではない。

時代の流れに身を置きながらも、建築に、家づくりにできることを考えていきたいのだ。

 

 

地域コミュニティとつながって暮らす

 

 

手前味噌ではあるが、私が勤める会社でこれらの社会課題に対してチャレンジしている事例を取り上げて考えていきたいと思う。

「暮らしを取り戻す」を合言葉に取り組む、「杜くらし」というプロジェクトだ。

緑豊かな複数区画の分譲地の中央に共有空間をつくり、そこに住む人々がそこを行き交うことで、「向こう三軒両隣」のようなコミュニティをつくろうというものだ。

ここでいう「杜」とは、仙台藩伊達政宗公の時世に、家臣の屋敷に植えられ、住む人や地域で大切に育てられてきた木々のことを言う。

この木々の存在が、仙台を「杜の都」と呼ぶに至る風景を作ってきたのだと言われている。

「暮らしを取り戻す」と言っても、具体的にどんな暮らしを取り戻そうとしているのか。

いくつか例を挙げてみる。

 

ひとつは家族がつながる暮らし。

キッチンに立っていても、外で遊ぶ子どもや2階にいる家族の気配を感じられる、3次元につながる広がり間取りで互いを思いやる暮らし。

ひとつは、自然とつながる暮らし。

室内から窓越しに庭の木々を望み、ウッドデッキでは半分室内、半分外といった心地で自然とつながることのできる暮らし。

ひとつは、ご近所と程よくつながる暮らし。

プライバシーを確保しつつも、庭やウッドデッキといった外に暮らしを開いていくことで、地域に住む人達とつながりが出来ていくのだろうと思う。

先述のような共有空間があるからか、実際に仙台市泉区根白石で始まった6世帯が暮らす「杜くらし根白石」では、そんなつながりが見えやすいのである。

家族どうしが日頃から声を交わし合い、子どもは洗車や庭作業をする大人たちに見守られながら遊びまわる風景。

そのシーンだけ切り取っても、三間の「空間がない」と「仲間がない」に対するひとつの解になり得るのではないか。

「関係性の栄養失調」とも書いたが、確かにご近所付き合いは煩わしい側面もある。

それでも、何かあったときに頼りにできる近くの他人が居るということが、心の安定をもたらしてくれると思う。

それが、忙しい毎日の中でも心にゆとりを持つことにつながり、「時間がない」と口走りながら忙しなく過ごす日を1日でも減らしてくれるかもしれない。

 

私たちの生業は家づくりであるが、それ以上に「暮らしづくり」が求められている。

例に取り上げた「杜くらし根白石」を成功事例として伝えたいわけではない。

人は心の奥底で、人や自然とつながり生きていくことを求めている。

私たちは家づくりによって、情緒的に安定し、日々の幸せを感じられる暮らし、そしてコミュニティづくりに寄与できると思うのだ。

私たち建築に携わる者は、家づくりを通して、どんな社会を、どんな未来を描いていきたいのか。

自分の胸に手を当てて、今一度問いかけてみたいと思う。

 

 

杜くらし根白石での顔合わせを兼ねたBBQの様子。これからどんな暮らしが始まっていくのだろう。

 

 

 

 

 

阿部 梢

【筆者プロフィール】
株式会社建築工房零 所属の広報スタッフ。東北大学4年生の時、同社インターンシップに参加。村づくりのプロジェクトにおいて、持ち前の明るさと行動力を見せ、その後入社。「森の親子ようちえん」という子育て・教育関連のイベントの立ち上げメンバーとして参画。現在は企画広報スタッフとしてチラシ、パンフレット、ホームページ等のツール作成、イベント企画・運営等に携わり、日々奮闘中。

 

 

※この文章は、『IECOCORO[イエココロ] 宮城で建てる注文住宅 』に掲載されている連載コラムの内容となっています。