ゼロダヨリ/暮らし人

人が暮らしをつくり、暮らしが人を育む。
シリーズ「零の家の暮らし人」。

eps.22 街角のベーカリーを訪ねて

北仙台から徒歩3分カフェ&ベーカリー

9月中旬、北仙台駅から徒歩3分の場所にオープンした、カフェ&ベーカリー『Imagine(イマジネ)』を訪ねた。建築工房零が店舗改修工事を手掛け、内装を全面リノベーションした建物は、外装も店内も白で統一され、吹抜けからは光が差し込んでいる。ロンドンの街中に佇むベーカリーをイメージしたというその空間でズラリと並ぶパンやスウィーツだちを見ているだけで、頬がゆるんでくる。にっこり笑顔の快活な奥さんと、奥さんいわく職人気質なご主人。まるでジブリ映画『魔女の宅急便』に出てくるパン屋の夫婦のような二人が、個性豊かなスタッフと共に営んでいる。

 

幸せを呼び込む朝食の大切さ

店名の「イマジネ」は、思い描くという意味。《自分自身を大切に毎日を丁寧に過ごす豊かさ》をコンセプトに掲げ、テイクアウトのベーカリーはもちろん、朝はフレンチトーストなどのモーニングメニュー、昼はエッグベネディクトやタイ料理のカオマンガイといったランチメニューを提供するカフェにも力を注ぐ。「朝ごはんをゆっくり食べると、その日1日が幸せになるでしょう。ゆっくり過ごして、自分を大切にする時間を届けられる店にしたかった」と話す奥さま。自分たち自身は、3時台に起床して営業準備をするそうだが、「自分たちがのんびり朝ご飯食べられないからこそ、そういう時間を大事にしたいって思って」と笑いながら話してくれた。

 

三人寄れば文殊の知恵

オーナーであるYさんご夫婦は、8年前の東日本大震災がきっかけで自分たちのお店を持つことになった。震災の影響で当時勤めていたパン屋さんを離れることになり、「今が自分たちのお店を持つタイミングかもしれない」と思い至った。七北田公園近くの良い物件との巡り合わせもあり、2012年夏に1号店『a demain(アドゥマン)』を開いた。焼き立てのパンをそのまま公園でも食べられるようにと、公園近くを探していたのだそう。
アドゥマンが軌道に乗り、「一緒に働きたい」と話すスタッフが増えたこともあり、夫婦は2つ目の店を計画していった。そこは、働くスタッフ全員が“自分のお店”と思える場所にしたい。その思いで、お店づくりやカフェメニューなど、スタッフの声を沢山反映していった。「下積み時代に色々経験させてもらい今の自分がある。若い人にその経験をさせてあげたいし、一人で考えるよりもみんなで考えた方がいいお店になると思ったんです」と奥さん。

 

食がつなぐ人と人の心

地下階にある「ラボ」と呼ばれる製造室では、職人肌のご主人が腕を振るいパンを焼きあげる。求心力があり、周りを惹きつける笑顔の奥さんがお客様とスタッフをつなぐ。
パンをはじめとする“食”を通して、幸せを届けていく。そんな場所が生まれたのだなと感じた。ぜひ一度、幸せな1日を過ごしに足を運んでほしい。

通りがかる人は香ばしい香りに誘われて、次々と店内に入っていく。

店舗イメージのパース

実際に完成した店舗写真。設計スタッフとイメージをすり合わせ、理想の店舗が実現していった。

ベーカリーではあるけれどパンに限らず食時jを楽しめる場所に

イマジネでは、パンを取り分けるのはお客様ではなくスタッフが行う。「気軽にお客様と会話ができる、距離の近いお店にしたかった」とYさんは話す。コーヒーは、食事との組み合わせを最優先して選んだ川崎町の「KURIYA COFFEE」。どんな食事にも合う爽やかな飲み口が印象的だ。居酒屋はたくさんあるがモーニングやランチを気軽に楽しめる場所の少ない北仙台エリアでは貴重なお店になりそうだ。

毎日の食事で活躍するバケットやカンパーニュはクルミやレーズンなど、日替わりで味を楽しめるようだ。

白とグレーを基調とした内装で、無垢の木のキッチンカウンターや食器棚がアクセントになっている。

カウンターを隔てて会話などもできる、話しやすい距離となっている。

感動を届ける パン職人のご主人

パンづくりを担うご主人は、その場所の湿度、気温まで加味して粉の配合を調整し、その日に最適な焼き上がりになるよう調整するなど一切の妥協なしの職人だ。自分の良いと思うパンづくりを追求する姿もありつつ、一番はお客様に喜ばれることが嬉しいのだという。「お客さまから“食べて感動した!”と言葉を頂いたときは、この人天才だなって思ったんです」と奥さんがほほ笑む。

買ったパンやドリンクをその場で楽しめる、肌なじみの良い無垢木材のベンチ。

カフェスタッフから「ニーズをキャッチする才覚がある」と声があがった奥さん。家庭では5人の子のお母さんだという。

写真手前のエッグタルトは、優しい甘さの卵とサクッとした生地が絶妙の一品。

縁を引き寄せ、理想が現実に

地元で店舗改修工事も担う零と出会い、どんなお店にしたいのか日々イメージを膨らませながら、協力してお店づくりができたこと。不動産屋さんからの紹介で北仙台駅前のテナントに出会い、元は飲食NGの物件だったが、大家さんに直談判し、飲食店でも良いと協力を得られたこと。イマジネのオープンまでに「いろいろなラッキーが重なった」と奥さん。「担当者の女性と話が合って、丁寧に話を聞いてもらえたのが驚きでした!零に頼んで良かった」と話してくれた。

2~30代が大半というイマジネスタッフ。もともと夫婦のつくるパンのファンの方が多いのだという。

取材の日、エッグベネディクトを振舞っていただいた。モチモチとした食感のパンととろりとした卵が至高の組み合わせ。スープや副菜も本格的。

いずれ、お酒と一品を楽しめる夜営業も検討しているという。今後も楽しみなイマジネだ。

DATA

リノベーション設計 / 石田 文子(二級建築士)
現場管理 / 和田 哲子(一級建築士)
施工 / 大山 海渡(社員大工)
(いずれも(株)建築工房零スタッフ)