ゼロダヨリ/暮らし人

人が暮らしをつくり、暮らしが人を育む。
シリーズ「零の家の暮らし人」。

eps.16 ちょっとの手間が彩る日常

eps.16 ちょっとの手間が彩る日常

窓越しの雑木林と川の情景を求めて

春の気配が色濃くなってきた3月の中頃、築2年を迎えるHさんの住まいを訪ねた。(写真撮影 : 2017年6月)Hさんの家づくりは、子どもたちの成長に伴い、購入したマンションが手狭になっていったことから始まった。もともと空き家になっていた身内のすまいが市内にあり、そこを活用できればと新築に踏み切った。奥さまは、もとのマンションの、窓越しに望む雑木林と川の風景をとても気に入っていた。その情景を手放すのは悔しかったが、せっかく戸建に変えるならば、使い勝手も暮らし方もとことん理想に近づけたい。その想いで家づくりに取り組んでいった。

 

帰ってくると ほっとする居場所

4人家族の長であるご主人は「家に帰ってくると、ほっとします」と話す。仕事柄出張なども多く、まだまだ自宅に新鮮味を感じているよう。この春高校2年生と中学1年生になる子どもたちは、バスケに打ち込んでいる。「小学生の時、娘が学校から練習体験のチラシを持ってきて。それから週末は練習、試合の付き添い。すっかり子どもたちの追っかけ生活です」と奥さまは嬉しそうに話してくれた。子どもたちは学校の他にバスケや塾など、家で過ごす時間はそう長くないというが、その 大半をだんらんの間で過ごしている。夕食後は、母親と子どもたちでテレビ前のスペースの取り合いが日常。ご主人は、家族が寝静まった後、テレビで子どもの試合のビデオを夜な夜な見るのだそうだ。

 

好きが高じて仕事につながる

奥さまはもともとパンづくりやクッキーづくが趣味だったが、趣味が高じて今や友人たちからの注文が相次ぐほどになった。特に、バスケチームのユニフォームや、サンタやク リスマスリースの形を描くことのできるアイシングクッキーが大人気。アイシングとは、クッキーの表面に砂糖などを溶かした色付きのペーストで図柄を描くこと。乾燥に1日はかかるので、出来上がるのに数日かかることもあるという。手間暇がかかる分、受け取った時の感激はひとしおだ。

 

ちょっとの手間を楽しむ

アイシングクッキーの着色には天然色素のものを使っている。紫はムラサキイモから、黄はクチナシの果実から作られる。「石油から 作られたタール色素は使い勝手は良くても、石油って言われるとちょっと気が引けるよね」と話す奥さま。「IHは掃除が楽だけど、ガスの火力に比べたら魅力は半減。エアコンはボタンひとつで楽だけど、冬はペレットストーブを付ける方が多い。使いたいものはちょっとだけ手間がかかるんです」と笑って話してくれた。
2年前、家族で実のなるジューンベリー2本と、ツツジを庭に植えた。「前の家みたいに、窓からの景色を雑木林にしたいんです。大きくなるのに10年以上かかるかなあ。」子どもの姿を木々の成長に重ね合わせ、これからもHさんの日常は続いていく。

仲の良い4人家族のHさんご家族。

無垢の丸テーブルと椅子が、すまいに優しく調和している。

L字型のH様邸は、それぞれの部屋から庭へと心地よく目線が抜ける。道路側からは木フェンスで目かくしを施す。日当たりの良いウッドデッキは、梅や果物を干したり編み物作業するのに最適な空間。

子の間は家具で間仕切る

部屋として仕切るのではなく、入り口にのれんをかけて、家具で空間をやわらかく分ける。マンション暮らしの時は自室 がなかった子どもたちは、それぞれの部屋ができて嬉しく思っ ている。それでも今のところは、家族みんながいるだんらん の間で過ごす時間が一番長いのだそう。

2階ホールには、造作の学習机が。 日当たりも良く心地よい居場所に。

大崎市出身のおおらかなご主人。取材にお邪魔したこの日は、パパ好みの姉妹品「女子ごのみ」をお土産に持た せてくれた。

使い勝手の良さとこれからの用途拡大を見据えたキッチン

奥さまはかねてからパンづくりが趣味。とても個人所有とは思えない量のパンの型やクッキーの型を持っている。家づくりのヒヤリングの際、設計士に希望したのは、広く使い勝手の良いキッチンと食品庫。いずれは自宅でパンやお菓子づくり教室もできるように、と考えての設計だ。

だんらんの間とL字につながる和室は、少し天井が低くなり落ち着く空間に。

注文にあわせ、図柄と個数を決めてクッキーづくりを開始。ユニフォームには背番号も。

リビング階段と吹抜が家族をやわらかくつなぐ

ご主人の理想はリビングに階段がある生活。玄関から誰とも顔を合わすことなく自室に帰ってしまうような生活はさみしい。家族みんながともに過ごせる家がいい。そのイメージと、奥さまが希望した木のぬくもり、暖かさを感じられる空間が、ゼロの住まいと合致した。

H様邸の外観。落ち着いた色味が住宅街のすまいから浮かずに、それでいて埋もれずに佇んでいる。

バスケが好きな二人のために、庭にはバスケゴールが設置されていた。

玄関前に植えられたマルバノキ。

DATA

所在 / 青葉区貝ヶ森
竣工 / 2017年3月
設計 / 江本 智彦(一級建築士)
構造 / 在来工法
延床面積 / 37.75坪
敷地面積 / 61.20坪