
eps.14 男の休日
eps.14 男の休日

猫と過ごす気ままな「休日」
奥様と子供たちのいない、休日の昼下がり。冬の日差しが差し込む窓辺で昼寝を楽しんでいる猫とご主人の二人きりの空間は、それでもどこか楽しそう。
今日は子供たちの卓球クラブで奥さんも夕方まで付き添いに。晩御飯の用意を任されたご主人は、手馴れた手つきで薪ストーブに火を入れる。普段から料理をたしなみ、朝はストーブの上でスープを煮込んだり、スキレットに玉子やウインナーを乗せて朝食の準備をすることもある。「帰ってくる家族をどんな料理で楽しませてやろうかな」。前日から色々な下味をつけた豚肉を取り出すと思わず笑みがこぼれる。フライパンに乗せ、焼き色をつけたあとは、ストーブの上でじっくり焼き上げる。一息ついて、缶ビールを開ける、この瞬間が最高の贅沢だ。
アウトドアが家族の絆を強くする
子供は男の3人兄弟。長男は就職のため東京へ出てしまったが、帰ってくればご主人を含めた男4人で買い物に出かけたり、だんらんの間でゲームをしたりと、とても仲がいい。さらに、赤ん坊の頃からアウトドアに慣れ親しんだE家の子供たちはそのおかげでか反抗期もなかった。実はアウトドアには自主性を身に付け、行動を通して達成感や自信を育む効果がある。「この家はほぼ間仕切りがないオープンなスペース。どこにいても家族の存在を感じることが出来るし、ご飯を食べるときも一緒。そうした一体感も反抗期がない要因になったのかもしれません」とご主人。薪割りやストーブの火起こしを自主的に手伝う子供たちの姿が見られること。それも薪ストーブの魅力のひとつなのだろう。
飲みながら・・・調理を愉しむ
ひとつ、またひとつと薪ストーブの天板に料理たちが並べられると、すっかり陽が落ちた窓辺から、猫のみかんちゃんが暖を求めてストーブの周りに寝床を移した。子供たちがまもなく帰ってくる。アヒージョの入ったスキレットからほどよい湯気が立ち、熾き火になったストーブの中へ手際よく手作りのピザが投入された。調理器具にアウトドア用品を使っているが、ほとんどが鋳物製。使い始めや使った後の手入れを怠るとすぐに錆びてしまう。それらの手入れもご主人の仕事だ。「面倒と思われがちですが、好きなので苦にはならないです」と笑って答える。
高温であっという間に焼きあがったピザは自家製とは思えぬほどの本格派。「自分の食べたいものを作ってます」というご主人のつくる晩御飯はどこかお酒のおつまみ風。それでも野菜やお肉をふんだんに使った自慢の4品が食卓に並んだ。「ただいま」の声と共に、男らしい晩御飯の完成だ。
自然体で過ごす愛しい毎日
「薪ストーブは自慢になります」と話す次男のK君。ご主人が不在のときは子供たちが率先してストーブに火を入れる。「薪ストーブって面倒なだけで、最初は絶対嫌だって反対してたんですけど、こんなに生活が楽しいものになるなんて」と奥さん。住んでいるだけじゃない、自然に対する感謝や生きているという実感がそこにはある。「子供たちも薪割りとかよくやってくれて、楽しそうにやっているところを見るとそれだけで楽しいなって」。家族の言葉にご主人の心も温まる。楽しい宴はこれからだ。
家の周りに積まれた薪の束。中にはご主人の実家から切り出した薪や近所のリンゴ農家から貰ったリンゴの薪も。
食べたいものを作っているだけ。 基本、おつまみですけど(笑)
実家が米農家で、学生時代はたくさんの食材が送られてきた。自炊はその頃から始めたというが、野菜を刻む音が小気味よく響き、ピザは生地から作る本格派だ。
薪ストーブが調理の主役。
薪ストーブは台所の隣にあって、行き来がスムーズ。
ケトルにダッチオーブンにフライパン、熾き火になれば五徳を置いてピザなどの料理も楽しめる。最近は子供たちのおやつ用にいろいろな種類のサツマイモやじゃがいもなどを入れて楽しんでいる。
ストーブのある土間へは勝手口から出入り可能。薪の運び入れがスムーズだ。
キッチンと薪ストーブが近いことも、薪ストーブ料理がしやすい理由のひとつ。
子供たちの「笑顔」を肴に
子供たちの「笑顔」を肴に手馴れた手つきで、声をかけるでもなくみんなで食事の準備が始まる。大好物ばかりがならんだテーブルに思わず笑みがこぼれる子供たち。一人きりの休日を家族のために過ごす。それもまた、「男の休日」だ。
2階の吹抜部分はスキップフロアになっていて、冬の日差しを逃さず取り込む。洗濯物干しに最適な場所。奥は子の間。「お父さんは野球やサッカー、バトミントン、いろんなスポーツで遊んでくれます」と話す子供たち。




Data
所在 / 泉区南中山
竣工 / 2015年9月
設計 / 小野 幸助(一級建築士)
構造 / 在来工法
延床面積 / 39.60坪
敷地面積 / 73.31坪