ゼロダヨリ/暮らし人

人が暮らしをつくり、暮らしが人を育む。
シリーズ「零の家の暮らし人」。

eps.11 住み慣れた街へ

eps.11 住み慣れた街へ

栗原の自然に同期する暮らし

ヒノキで作られた枠の中に新録の山々を閉じ込めたガラス窓。耳を澄ますと降りしきる雨が打つ葉音が聞こえてくる―。

栗原に建つこの住まいは、自然との調和を果たした家だ。どこにも人工的な香りがしないのに、快適で、安心な空間を創り出している。

Sさんご家族が新居に引っ越して3ヵ月。ご主人は通勤のため、仙台へ片道2時間の距離を間位置に運転しているが、地元でもあるこの栗原での生活は苦にならないという。2歳になる息子のS君はお母さんが出産のため長期入院中なので、お父さんの実家とこの新居を行ったり来たりの生活。本来であればまだまだ母親の恋しい年頃だが、黙々と一人で遊ぶことが多いS君は、この日もお気に入りのミニカーを片手に美しい木目の床を道路に見立て、元気に遊んでいた。

 

薪ストーブのある生活に憧れて

「ソファーに座りながら、暖炉の前で寛ぐのが夢だったんです」と、冬の訪れが楽しみなご主人。それ以上に楽しみにしているのがサマーリビングでのバーベキュー。もともとご夫婦の地元が栗原なので、ご両親や幼馴染と一緒にバーベキューの出来る日を心待ちにしている。自然をふんだんに取り入れた間取りはどこからでも簡単に外へ出ることが出来るので、開け放てば大人数でのパーティーも可能。都会では味わえない贅沢だ。

「昔から納屋のある家に住んでいたので、自分の家を建てる時も納屋のような、何でも出来るスペースが欲しかったんです」。兼業農家だったご実家同様、庭で家庭菜園を営む予定のご主人。自分で育てた野菜をそのままバーベキューで食べることができれば、味も格別だろう。

 

自然と共に成長を見守る家

「朝になると、日差しが家全体に降り注いで、自然と目が覚めるんです。なんだかこの家に僕たちが合わせるように生活している気がします」。仕事と奥さんの入院でなかなか捗らない引っ越し作業。今のご主人の寝室は二階の子の間にマットを敷いたもの。それでも天気が良い時に窓から見える栗駒山や時折顔を見せるシカやキジなどの動物たちに心が癒される。「玄関に梅の木が植えられていて、先日梅の実を拾って実家に届けたんです。梅酒か梅シロップになるのかなあ」。季節の変化も愉しみながら、それを自然な形で生活に取り入れることのできる暮らしを楽しんでいる。

もちろん快適なだけではない。広い敷地の草刈りは骨が折れる作業で滞りがちだ。けれどそんな時、隣の奇策なおばあちゃんが手伝ってくれたり、子供と遊んでくれるのでとても助かっている。人とのかかわり方も都会とはずいぶん違う。子供にとってもいい影響を与えるだろう。

 

住みよい場所に、住みよい家を

ご主人がキッチンでコーヒーを淹れながら「ここからだと景色のすべてが見渡せる、私のお勧めスポットです」と教えてくれた。出産を終え、新居に戻ってくる奥様への最高のプレゼントになりそうだ。ご主人の顔も思わずほころぶ。

コーヒーと一緒に、栗原で有名な洋菓子店「ハッピー」の栗駒ショコラをいただいた。しっとりとしたスポンジがやさしく甘い。余人家族の幸せな物語はここから始まる。コーヒーから立ち上る湯気の向こうに、栗原の自然に重なる親子の楽しい未来が広がった。

栗原の自然が住まいにたくさんの恩恵を恵んでくれる

ブラックのガルバリウム鋼板とヒノキのコントラストが美しい玄関

入院中の奥さんに代わって、ご主人がコーヒーを淹れる。窓から見える景色と相まって、コーヒーの香りからも瑞々しさが伝わってくるようだ。

バーベキューが待ち遠しいサマーリビング

雨が降っても開放的に愉しむことの出来るサマーリビング。中にはコンセントやテレビアンテナが取り付けられ、外には流し台まであるので、遊び方は無限大。洗濯物を干したり、洗車したりと実用性も十分。

火おこしの作業はご主人の仕事。「時間を忘れて集中できるんです」。

建築時の端材は、焚付けとして役立つ。

S君の名前はお母さんがジブリ作品から付けたもの。髪型も真似してお父さんがカットしているんだって。お母さんが帰ってくるまで、もう少しの辛抱だね。

木のぬくもりに身を委ねて…

1階が隅々まで見渡せる広々とした吹抜け。さらにリビングの大きな窓からウッドデッキ、そして庭へと抜けることが出来るよう設計。開放的な空間で四季折々の雰囲気を愉しむことが出来る。

中庭に植えられた植栽は、通りからの目線を遮る役割も担う。

階段に倣ったデザインの収納スペース。

とりきれないほどの梅の実。

雪の多い地形に合わせて、屋根を片流れに。南側の眺望を取り入れた設計が健やかな生活を実現させる。

窓から差す朝日は絶好の目覚まし時計。

イスは地元栗駒の杉の木を使った、その名も「KURIKOMA」(wise wise)。ゼロ村市場でも取り扱っている。(¥50,000~)

家族のために家ができること

いろいろなハウスメーカーを回りましたが、どこも閉塞感を感じてしまい「なんか違う」と夫婦で話し合っていました。今の家はすべての部屋がつながっていて平等に陽が差すので家族みんなの生活を合わせやすい家だなと感じています。

DATA

所在 / 栗原市金成   竣工 / 2018年3月   設計 / 小野 幸助   構造 / 在来工法・手刻み   延床面積 / 40.36坪