ゼロダヨリ/暮らし人

人が暮らしをつくり、暮らしが人を育む。
シリーズ「零の家の暮らし人」。

eps.special  森の親子ようちえん

自然の中の それぞれの時間

馬やヤギとのふれあいをはじめとして、夏は川遊びや虫取り、冬は氷の研究やそりすべりと、季節それぞれの自然を遊ぶ。汚れたら薪ボイラーで沸かした露天風呂で洗い流す。泉ケ岳ゼロ村では月に1度、「森の親子ようちえん」を開催している。

「子どもを自然豊かな環境で思いっきり遊ばせたい」という想いから参加者はやってくる。ここでは思い思いに自由に遊ぶことができるが、親に対して1つだけルールを設けている。それは『指示語・禁止語を使わない』こと。このルールのもとで過ごす中で、大人の目線や立ち振る舞い、子どもとの関わり方にたくさんの気づきがあるようだ。

 

不便だからこそ 得られる喜び

調理や暖房に必要な火を熾すことから一日が始まる。整った設備が用意されているわけではないゼロ村の環境に、大人も子どもも悪戦苦闘。マッチ3本で一度に擦ってみる。マッチに火を点ける人と風除けの人で役割分担をする。紙を入れるとごおっと燃えることに気づく。子どもたちの柔軟な発想や工夫に驚かされることも多い。  普段なら「危ない!」と止めてしまう行動も、あえていつもとは異なる環境のゼロ村で見守ってみる。擦りむいて痛い思いをするのも、危険との距離感を知ることも、子どもにとっては大切な体験のひとつ。子ども同士の衝突も、この場では親同士の共通認識があるから、大きなまなざしで様子を見守ることができる。

 

大人同士で 分かち合う想い

「子どもが楽しいだけではなく、親も気づきの多い場所であってほしい」と、牧場長の平井さんは話している。親子ようちえんに初めて参加したHさんご家族。川や池にずんずん入っていく子どもを、「着替えを持ってきていないから入っちゃダメ!」と止めてしまった。その後、子どもがしたいようにさせてあげたかったなと、反省したのだそう。2回目は、いくら濡れてもいいように、10着分も着替えを持ってきた。この日は、「(川に)落ちろ~!」と思えるくらい、我が子のイキイキとした姿を楽しめたという。

 

気づき、関わり、成長していく

2年前から親子ようちえんに参加するAさんは、「我が子には自分で考えて行動できる子になってほしい、と思いながら、実際は親の価値観で余計な助言ばかりしているのかも」という気づきがあったという。「子どもが何を伝えたいのか考えるようになったら、子どもも親の言葉をちゃんと聞いて、気にしているんだな、と分かるようになったんです」と話してくれた。子と子、親と子が関わり合って、“人”として成長していく。そんな気づきのきっかけや、小さな一歩を踏み出すお手伝いを、森の親子ようちえんは大切にしていきたいのかもしれないな、と感じた。

川の高低差を活かし、ホースに川の水を引き込む。これだけでも大発見!水道代なんか気にせずに、思いっきり水遊びを楽しむ。

馬と触れ合う。乗せてもらったお礼に、毛並みをブラッシングし、タオルで身体を拭く。馬の体温や息遣いまで感じられる時間。

どんな過ごし方でも 気の向くままに

ゼロ村だからこそ出来る遊びや体験をしてほしい、という親の想いを知ってか知らずか、子どもはそれぞれの興味に従って、それぞれの時間を過ごす。K君はこの日、バケツの表面に張った丸い氷に熱烈な視線を送る。高いところから落としてみたり、燃えている木をあてて煙をもくもくと立ち上らせたり。親は、子どもの初めて知る一面に、驚くことも多いようだ。

さまざまな生き物に触れる。「冬はあまり生き物がいないんだね」という気づきも。

氷を両脚で一気に割るYちゃん。

木材加工場からカンナ屑をもらい、着火のサポートに。

ケンカだって、 自分たちで解決できる

この日初対面の、一人っ子のY君と年上のY君。雪合戦でケンカになった二人。「痛くした」「おまえだってやっただろ。」スタッフが見守りながらも、「頭にぶつけるのはダメ、身体にぶつけるのはマル!」と、自分たちでルールを決めて、遊んでいく。

調理のお手伝いや、火を囲みながらの暫しのまったりタイムが、参加する親同士の距離を近づける。焼き芋やポップコーンなどのアウトドア調理に挑戦するご家族も。

一日の終わりには、親だけで振り返りの時間を設ける。その日の様子にとどまらず、日常の子育ての話、実践していることや悩みなど、話は尽きない。

けがの裏にある 子どもなりの想い

手をつかずに顔から転んでしまい、額を大きく擦りむいてしまったH君。その転び方の理由は、友達に渡そうとして手に持っていたマッチを落とさないようにするためだった。転んだ直後は泣いていたが、すぐケロリとした表情で立ち上がったH君。その後ろ姿は堂々として見えた。

薪ボイラーで沸かしたお湯は、大人にとっては足湯に、子どもにとっては露天風呂になる。裸の付き合いで仲良くなる子どもも。

ゼロ村森の親子ようちえんは、今年度も5月から月に1度開催する。

DATA

ゼロ村牧場パカラッチョ‼  /  所在:泉区福岡字森下12  /  Tel : 022-778-3645   /  Mail : paca@zerocraft.com