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eps.2 農と食で未来をつなぐ

eps.2 農と食で未来をつなぐ

今回の暮らし人、Sさんご夫婦。農業も禾食やも子育ても主に夫婦で行う。

農の未来を 食で繋ぐ禾食や

田んぼの緑が風に波打つ7月。自宅で「禾食や」を営むSさんご家族を訪ねた。5年ほど前に完成した零の家は、県内でも人気のタルト、キッシュのお店としてだけでなく、地域のよりどころとして欠かせない存在となっている。

元々フレンチシェフだったご主人は、6年程前に実家の農家を継ぐことになった。社会問題にもなっている農家の後継者問題は、思っていたよりも深刻で、平均で70歳代という超高齢化した農家の実態を目の当たりにした。元々閉鎖的な世界でもあり、農業という仕事をよく言う人はいなかったという。奥さんも、越してきて3年は田舎ならではのルールに振り回されてしまい、この町を出たいと思っていたほどだったと話してくれた。 そんな生きづらいイメージから一転、今では田舎暮らしを愉しめるほど気持ちが豊かになったと笑顔がこぼれる。それは、この家と禾食やの存在があったからだと。

 

穏やかな暮らし 凛とした空気

「禾食や」を始めたのは、零の家に住み始めてから。農業のネガティブなイメージを払拭するために、美味しいタルトやキッシュを作り販売することで、新しい風を吹かせたい。屋号である「禾食や」に持たせた意味は、稲や農作物、苗を表す「禾」。人はそれを食べることで命を繋いでいくということで「食」。そのあとに続く「や」は、禾や、食や、○○というように、その先の可能性を意味するのだという。こうして、禾食やは農業の希望に満ちた未来を紡ぎ出している。Sさんの農園では3名の女性スタッフがいるが、土に触れる喜びを噛み締めながらも、そうした未来に心をときめかせ、イキイキと働いているそうだ。

 

天からの恵みを 未来へと紡ぐ

さらに、この禾食やという場所が、かつての奥さんと同じように悩みを抱える女性たちのよりどころとなり、ほっと一息付け、充電できる場所として、お互いの心の支えにもなっている。

 

この家があったからこそ始まった。

すべては、零の家から始まった。今では何をするにもこの家があり、家族にとってとても大切な存在なのだと嬉しそうに奥さんは話してくれた。この日、高校で陸上をするために親元を離れて暮らす長女が帰ってきた。話は自然と陸上の話題に。何気ない会話からも成長した娘の姿を嬉しく思う。彼女にとってもまた、この家はなくてはならない場所なのだろう。

Data

所在//遠田郡美里町
竣工/2013年4月
構造/伝統構法・木組み
敷地面積/107.44坪
延床面積/30.20坪

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