木の家の断熱

快適な室内空間の構築において「断熱」を抜きには考えることはできません。
当然、しっかりとした断熱はCO2の削減や省エネにとても重要なのは言うまでもありません。

そこで、快適な断熱について考えてみます。


まず、はじめに考えなければいけないのが、なぜ断熱が必要なのか?ということです。
目的は何?
なぜこんなことを言うのかというと、目的のための手段である「断熱」がいつのまにか目的になって「断熱のために家を建てる」方をイヤというほど見てきたからです。

ソト断熱VSウチ断熱、高気密VS・・・・・ のようなくだらない議論はどうでもいい。

ここでの「断熱」の目的を「暖かく(涼しく)快適な空間を省エネルギーで構築するため」と定義します。
決して「冬でも半そでで過ごせます!」や、ましてや「「Q値・K値・C値」の数字のため」ではありません。

  • ①間取りや窓・庇の位置など設計的アプローチ
  • ②断熱材やサッシの性能など仕様的アプローチ

の二つで考えます。
②ばかりが重要視されますが、同じかそれ以上に①は重要です。


①設計的アプローチ

冬の暖房で得た熱エネルギーを出来るだけ家の外に排出しない間取りが必要となります。
仮に、壁や天井などからの熱損失がないとすると、空気の出入りがなければ熱損失は理論上ゼロになります。
しかし、実際には玄関や勝手口での人の出入りの時に空気の入れ替えが発生してしまいます。
玄関を開けてすぐに吹き抜け、という間取りをよく見ます。
しかし、玄関を開けるたびに冬の冷気が吹き抜けを通じて家全体に回ってしまうのでは、どんなに断熱材を強化しても意味がありません。同様に勝手口も同じです。

玄関は一坪、または一坪半で一度 建具で区切る。
いわば北国の風除室の役割を持たせます。勝手口も同様。
下足室、食品庫などの用途をもたせ、なるべく小さな空間をしつらえます。
食品庫であれば逆に暖房された空間と区分けする事で食品の保存上都合が良い。


開口部(窓)の計画も重要です。
冬の太陽熱は積極的に取り入れるべきだし、夏の照りつける太陽はなるべくやわらげたいです。
日本人の住まいには昔から軒の出が深く取られています。
深い軒は太陽高度が高い夏の照りつける陽射しをさえぎりながら低い角度から差し込む冬の日差しを家の奥まで迎え入れるのに役立ちます。
軒の出は単なるデザインや外壁の保護だけではなく重要な役割を持っています。

遮熱性能の高いLOW-Eガラスを使用するときは無理に南側にまで入れると貴重な冬の日射による取得熱もカットしてしまうことになります。
南の窓は夏の日射が少なく、冬の日射が最も多くなります。
東西の窓はその逆になり、北の窓はほぼ直射日光の影響を受けません。
南はLOW-Eを入れない窓でなるべく大きく開口部をとり、LOW-Eは北・西・東の窓に採用し、なるべく小さく計画することも必要です。


②仕様的アプローチ

室内で人間が「暖かい」と感じる要素は温度だけではありません。温度・気流・輻射・湿度がかかわってきます。
人間がもっとも快適に感じる温度は
人間の代謝量=外部への放熱量
との熱的平衡状態となり、その放熱量は、対流・輻射・水分蒸発の潜熱によります。
たとえば、断熱を不十分にした室内で高出力の暖房から熱風がガンガン吹き出てきているとしますと、温度が十分に高いとしても、冷えた床や壁からの冷輻射により熱が奪われたり、冷輻射の不均一・気流によって不快に感じてしまいます。
逆に温度がそこそこでも床や壁が十分に暖かいと快適なのはそのためです。
断熱は室温を高く保つことに加え、壁・天井・床の温度を保ち、冷輻射を防ぐ事が必要になります。
つまり、窓を閉め切った状態で外部との温度差を確保するだけが断熱ではなく、(例えが夏と冬で逆になりますが)熱い夏に窓を開けっ放しにして風を受けながらきちんと断熱された壁や天井から熱放射を受けずに快適に過ごすことも断熱の大きな役割です。

玄関は一坪、または一坪半で一度 建具で区切る。
いわば北国の風除室の役割を持たせる。勝手口も同様。
下足室、食品庫などの用途をもたせ、なるべく小さな空間をしつらえる。
食品庫であれば逆に暖房された空間と区分けする事で食品の保存上都合が良い。

しかし、ここで落とし穴があります。
理論上はそれだけで決まるのだが、実際の現場は机上のとおりではありません。
いくら高性能の断熱材でも、隙間なく詰め込むことができなければ理論上の数値はまったくでありません。
実際の現場では断熱材は筋交いやコンセント、ボルトなどで断熱欠損だらけになります。

つまり、
断熱=断熱材の性能×厚み×現場施工精度
となり、どれが欠けても十分な断熱は得られません。