株式会社 建築工房 零

零 Zero



伝統工法・木組み

伝統工法・木組み

株式会社 建築工房 零 
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伝統工法(木組み+貫構法)
○木組みは釘を使わないで建てる?
○木組みは地震に対して揺れて逃がす免震構造である

伝統構法の木組みに対して間違った認識が広まってしまうの良いことではないような気がする。

零では伝統構法の木組みで家を建てるが、釘もビスも使うし場合によってはキチンとボルトも使用する。
それは、
「金物を使用しないでつくること」
が目的なのではなく、
「強い家をつくること」
が目的だから。
金物を使用しなければならないのに使用しなければ、それは単なる欠陥住宅だろう。

木組みは
「金物を使用しない」
のではなく、
「金物に頼らない」
構法といえるだろう。

在来構法(金物工法)と伝統構法の木組は同じ日本の木造軸組ではあるが、そのメカニズムは全く異なる。

(ちなみに、在来構法というと古くから日本にある伝統的な工法のように聞こえるが、実際は戦後に生まれた金物を使用した合理化工法で比較的新しい技術である。)

*多少めんどくさい話になります。
興味のない方はとばしてください・・



下に材料力学で用いられる応力ひずみ線図とよばれるグラフがある。
縦軸が加えられた力、つまり応力で、
横軸がその入力された力に対する変形を表している。
×印が破断点で、つまり、耐えられなくなって壊れるところ。


赤い線は大きな力を加えてもなかなか変形しない「固い」材料。
例:ガラス、石

青い線は小さな力で大きく変形してしまうが、大きく変形してもなかなか破壊しない粘りのある材料。
例:竹、プラスチック


つまり、グラフの
「高さ」→固さ
「巾」→粘り強さ
となる。
ちなみに、建築的には「粘り強さ」は「靭性」や「塑性変形能力」とよばれる。
建築に置き換えるとき、赤い材料、青い材料の「材料」を「構造」と読み替えていただきたい。

ところで、地震に対する建築物の「強さ」とはなんだろう。
その「強さ」を「吸収できる地震エネルギー量」とするならば、
それはそのグラフの面積になるはずだ。

赤のように固いだけでも、青のように粘り強いだけでもいけない。
緑のように固さと粘り強さを兼ね備えた材料(構造)が理想だ。

金物で仕口を固める、筋交で壁を固めるのはグラフの高さを稼ぐ事。
では、巾を大きくするにはどうすればいいのか?


木材の破壊形態は6つある。
引張り
せん断
曲げ
割裂
すり切り
めり込み

上5つは塑性変形を伴わず脆性的な破壊となるが、唯一、
・めり込み(繊維に直角方向への圧縮)
だけが大きな塑性変形能力(靭性)を示す。

この木材の変形メカニズムを最大限に利用しているのが地震国日本で先人達が何千年の歴史を経て高めてきた伝統構法、木組み。

では、具体的にどのように靭性を高めていくのか・・

一つの仕口(接合部)を例にあげる。

在来構法が図@のように直行する梁を組み合わせるのに対し

図@ 在来構法の梁組例(蟻掛け)

伝統構法の木組みでは図Aのように太い下梁の上に上梁を重ねるように組み合わせる。

図A木組みの梁組例(渡りあご)

在来構法では見ての通り、木の組み方が簡略化されているので、
それだけでは小梁から大梁に力が十分には伝わらない。
ゆえに、どれだけ頑丈に金物で固めるかが重要となる。

対して木組みでは金物に頼る必要はない。

単純にはそれだけの違いなのだが、
その根底と結果には大きな違いが存在する。

○太い材料を太いまま使う。

二つの図を見比べでわかるとおり、太い材料の断面欠損が少ないので、応力が集中する仕口(接合部)の靭性(粘り強さ)に差が出る。

○長い梁を長いままつかう。

東西方向の梁と、南北方向の梁の高さに差が出る。

直行する材料を組み合わせるので、当然高さの差が出てくる。(もし、図Aの渡りあごを同じ高さで組むとどちらかの断面欠損が最低でも1/2になり、弱くなってしまう。)

それによって、長い材料を組むことが出来る

下にそのモデル図を示す。
2階や小屋の水平面(床)を表している。
空中から下を見たように見ていただきたい。

図Bでは横方向の梁が大梁仕口で短く切れてしまうが、
図Cの木組みでは両方長物の材で組むことが出来る。


図B在来構法の構造モデル(2階床伏図)


図C伝統構法の構造モデル(2階床伏図)

長い材料で組むことにより力が分散し、粘り強さを高める。

ゆえに、木組みではより構造と間取りを一致させた高度な設計が要求される。

しかし、逆に言えば、構造と間取りが一致しないでも成立する金物工法の場合、
力がスムーズに伝わらない構造でも形になってしまうという危険性がある。

それは設計者の構造に対する技術力低下を促しているのかもしれない。
御施主様が書いた間取りでそのまま建ててしまう設計者が多い。
プロとして提言し、目の前にある契約よりも
建主のために本当に価値のある建築をつくることが必要だと思う。。


もう一つ、ここで床ではなく壁についてもふれてみたい。

在来構法の壁は柱とナナメの筋交(スジカイ)で構成され、
柱は垂直荷重に、筋交は地震の水平力に抵抗する。

先述のように固さで地震力に抵抗するので、
「壁倍率」とよばれる、固さの数値がより高い筋交をより多く入れれば固い建物になる。

固さ=壁倍率×体力壁の数


筋交は地震力にに対して突っ張り、その仕口に突上げ力が集中する。
ゆえにその仕口を金物でいかに補強するかがカギとなる。

対して伝統構法は筋交ではなく水平方向に「貫(ぬき)」が数本入る。

地震による水平力が加わると各接合部に力が分散され、
それぞれの場所でめり込みが起こる。
突き上げ力も働きにくい。


また、貫は通常2間(3.64m)の材を使用し、
窓のある非耐力壁も貫が通るので、更に力が分散する。


しかし、先述のグラフにたとえるとこのモデルは青の線に近い。
靭性は高いが、固さ(初期強度)が足りない。

零ではその初期強度を高めるために
モイス
http://www.moiss.jp/

という面材を貫に打ち付けている。
モイスは合板に比べて吸放湿や透湿性に優れ、
内部結露を防ぐ面材として非常に魅力がある。
環境負荷が少ないのも魅力だ。

モイスにより固さを、渡あごや貫で靭性を高め、
理想の構造を目指している。

伝統構法なので、無条件に完璧とは考えない。

あくまで、伝統構法のそのメカニズムが魅力的なので
その力を最大限に活かしながら最先端の構造力学と材料を取り入れ、
理想の構造体を手に入れたいと考えている。