伝統構法の木組みでは図②のように太い下梁の上に上梁を重ねるように組み合わせる。
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図②木組みの梁組例(渡りあご) |
○仕口が強い
在来工法では見ての通り、木の組み方が簡略化されているので、それだけでは小梁から大梁に力が十分には伝わらない。ゆえに、どれだけ頑丈に金物で固めるかが重要となる。
対して木組みでは金物に頼る必要はない。また、その破壊形態は先述の「めり込み」になる。荷重は小梁から大梁へ無理なく伝る。
○太い材料を太いまま使う。
二つの図を見比べでわかるとおり、太い材料の断面欠損が少ないので、応力が集中する仕口(接合部)の靭性(粘り強さ)に差が出る。
○長い梁を長いままつかう。
東西方向の梁と、南北方向の梁の高さに差が出る。
直行する材料を組み合わせるので、当然高さの差が出てくる。(もし、図②の渡りあごを同じ高さで組むとどちらかの断面欠損が最低でも1/2になり、弱くなってしまう。)
それによって、長い材料を組むことが出来る
下にそのモデル図を示す。
2階や小屋の水平面(床)を表している。
空中から下を見たように見ていただきたい。
図③では横方向の梁が大梁仕口で短く切れてしまうが、
図④の木組みでは両方長物の材で組むことが出来る。

図③在来構法の構造モデル(2階床伏図)

図④伝統構法の構造モデル(2階床伏図)
長い材料で組むことにより力が分散し、粘り強さを高める。ゆえに、木組みではより構造と間取りを一致させた高度な設計が要求される。
しかし、逆に言えば、構造と間取りが一致しないでも成立する金物工法の場合、力がスムーズに伝わらない構造でも形になってしまうという危険性がある。
それは設計者の構造に対する技術力低下を促しているのかもしれない。御施主様が書いた間取りでそのまま建ててしまう設計者も多い。
プロとして提言し、目の前にある契約よりも建主のために本当に価値のある建築をつくることが必要だと感じる。
もう一つ、ここで床ではなく壁についてもふれてみたい。
在来構法の壁は柱とナナメの筋交(スジカイ)で構成され、柱は垂直荷重に、筋交は地震の水平力に抵抗する。
先述のように固さで地震力に抵抗するので、「壁倍率」とよばれる、固さの数値がより高い筋交をより多く入れれば固い建物になる。
固さ=壁倍率×体力壁の数
筋交は地震力にに対して突っ張り、その仕口に突上げ力が集中する。ゆえにその仕口を金物でいかに補強するかがカギとなる。
対して伝統構法は筋交ではなく水平方向に「貫(ぬき)」が数本入る。
地震による水平力が加わると各接合部に力が分散され、それぞれの場所でめり込みが起こる。突き上げ力も働きにくい。
また、貫は通常2間(3.64m)の材を使用し、窓のある非耐力壁も貫が通るので、更に力が分散する。
しかし、先述のグラフにたとえるとこのモデルは青の線に近い。靭性は高いが、固さ(初期強度)が足りない。
零ではその初期強度を高めるために
モイス http://www.moiss.jp/
という面材を貫に打ち付けている。モイスは合板に比べて吸放湿や透湿性に優れ、内部結露を防ぐ面材として非常に魅力がある。環境負荷が少ないのも魅力だ。

モイスにより固さを、渡あごや貫で靭性を高め、理想の構造を目指している。
伝統構法なので無条件に完璧、とは考えない。
あくまで、伝統構法のそのメカニズムが魅力的なのでその力を最大限に活かしながら最先端の構造力学と材料を取り入れ、理想の構造体を手に入れたいと考えている。