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結露と湿度。
住宅の性能は常に進化し向上し続けている。
ほんの数十年前までは外気温と室内温度の差はあまりなかったのが、いまや20~30度を超える温度差もあたりまえになっている。

温度差が大きくなると問題になってくるのが湿度(結露)の管理である。
窓にできる結露は温度差によるものなのは知られているが、建物に壊滅できなダメージを与えるものではない。本当におそろしいのは目に見えない壁の中で起きる結露、壁体内結露だ。

200年無傷の古民家が断熱改修をして快適になったが、温度差が大きくなったのに対する結露対策をしなかったために数年で腐朽することもある。




空気線図を下記に示す。



湿度には2種類ある。
絶対湿度とは単位空気あたりにどれだけの水蒸気が含まれているかであり、相対湿度とはその温度の空気が蓄えることができる水蒸気量(飽和水蒸気量)を100とした時の水蒸気量を百分率で示したものである。
私達が通常「湿度」というと後者の相対湿度を指す。

*通常、相対湿度は55%~65%が健康にも住宅にも良い、といわれている。

空気は温度が高くなると飽和水蒸気量が大きくなる。低くなるとその逆。
図からもわかるとおり、摂氏22度、相対湿度50%のやや乾燥した空気は摂氏11度に冷やされた時点で飽和水蒸気状態となり、相対湿度100%となる。さらに冷やされると飽和状態を超えた水蒸気は水となる(結露)。



図にたとえるとコップの高さが飽和水蒸気量、コップの水の量が絶対湿度、コップの大きさに対してどの位入っているかが相対湿度となる。
コップに入りきらなくなった水は結露となる。

ここで重要なのが、水蒸気の動き。水蒸気の分圧により、水は絶対湿度(相対湿度ではない!)の高い所から低いところへ動こうとする。
上の図で摂氏5度になり結露した空気は水面の高さが低くなるので摂氏22度の空気、摂氏11℃の空気からさらに水分が移動してくる。
摂氏5度の空気には常に水分が供給され続け、結露が進む。

つまり、温度の高い室内から温度の低い室外へ平衡状態になるまで水分は移動し続けることになる。
22度の室内において5度の空気と絶対湿度が平衡になるのは約33%。
室内がかなりの乾燥状態にならない限り結露は止まらない。
相対湿度33%は人体にも木の家にもとても良くない。いいわけがない。

そこで、水分が室外に移動しないように防湿層の施工が必要になる。



最も温度変化が多い断熱層の室内側に防湿フィルムを施工する必要がある。

*零では高気密住宅のような完全密封の空間をつくることにあまり積極的ではないが防湿フィルム(気密シート)であるポリフィルムを施工するのはこのためである。

しかし、どんなに完全な防湿層を施工しても小さな隙間から水分は移動してしまう。
防湿層と同時に、壁の中に進入した水分を早く蒸散させることが必要になる。

その為、外部は透湿性能の高い(透湿抵抗の低い)材料の施工が要求される。
進入した水分を外気に排出しやすくする。


実際には外壁や屋根材はつねに雨にさらされるので外部通気層をしっかりと設けて外部に排出する仕組みが必要。

「入りにくく出やすく」


コレが結露対策の基本となる。

ちなみに、宮城県(Ⅲ地域)では簡易計算で室内側と室内側の透湿抵抗を3:1以上にすれば結露は起きないとされている。

*上の図では内174:外5となり、結露が全く起きないように見えるが、実際の現場で防湿層を完璧に施工するのは不可能であり、経済的でもない。つまり、その数値を多めに取り、施工精度をカバーするのがもっとも現実的で経済的だと考える。

机の上の理論だけでは現場はおさまらない。

*外部に構造用合板(透湿抵抗20.6)やOSB合板(同30.6)を張る2×4や面材工法では室内の透湿抵抗を非常に高くしなければならない。
室内防湿層の施工は針の穴も通さない施工が必要になる。
(可能なのか?・・・)


ところが、条件を満たしても実際には結露は起きないことが多い。

木材や漆喰に代表される自然素材は微細な空隙を多く持つ。

そのため、その空隙に水分を蓄えることができる。
そして、乾燥したときにはその水分を発散させることができる。(蒸散性)

結露の条件は一日の温度変化の中で大きく変化するので、その中で水分を発散させるタイミングがあれば結露はしないことになる。また、通気層(外部)に蒸散するスピードが室内からの水分の進入速度を上回ることができれば理論上結露は起きない。

当社で標準的に採用しているセルロースファイバーは新聞紙のリサイクルでもともとは木材。
結露に対して非常に優れているといわれるのはこのためである。

上記の理論は「非定常計算」とよばれ、定常計算で結露発生するとしても断熱材の蒸散性能でカバーできることになる。


ここでよく陥りやすい落とし穴がある。

「自然素材の家は無条件に結露しない」

という偏った自然素材信仰。
「高気密住宅はダメ!」
「家をフィルムで覆ったら自然素材が呼吸できなくなる!」
「自然素材は完璧!」

と思い込んでしまうと盲目的になる。(失礼ながらとても多い)

確かに上記の理由で結露は発生しにくくなる。
しかし、外部との温度差がある状態で防湿層がないということは常に水分が外部に排出され続けることになる。
先述した通り、外部5度・内部22度では湿度33%になるまで水分は逃げていく。
皮肉なことに自然素材の家で逆に健康を害する結果を生むことになる。

自然素材は確かに優れているが、正しく理解して付き合うことが大事だ。


もう少しだけ掘り下げよう。

この理論で行くと、高気密住宅は湿度が保たれて快適なはずである。
しかし、実際に高気密住宅に住んでいる方は過乾燥に感じている方も多い。

いくつかの理由が考えられる。

一つは(熱交換型)24時間換気。
常に冷たい外部の空気が室内に供給される。
先ほどのコップの図を参考にすると、外部から摂氏5度、相対湿度100%の空気が供給され、熱交換と暖房により22度に暖められると相対湿度は33%になる。

二つ目に暖房。
当然密封性が高い室内で室内に排気を出す開放型灯油ストーブを使う方はいないだろう。自殺行為だ。
石油は1L燃やすと空気中のO2と結合して1Lの水分がでる。
皮肉にも有害な排気ガスと共に水分も補給されるわけだ。
それがない。

他にも、IHなど、様々な理由の複合的な作用が見えてくる。




いくら木組で丈夫な家をつくったとしても、その構造が結露で腐ってしまってはどうしようもない。
正しい知識を持った設計と施工が必要だ。

*文中の透湿抵抗の単位は(m2・h・mmHg/g)。


 
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