
株式会社 建築工房 零
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長寿命・地震対策の手段として伝統構法を一般解に [建築工房零の地震対策のポイント] 1 長もの・太もの材で継手の少ない頑丈 2 通し貫工法で大地震でも躯体を傷つけずに揺れを受け流す 3 面材・銅製ブレースで実生活上必要な剛性を確保する 長もの・太もので架構を組み構造用合板と鋼板筋かいで補強 宮城県仙台市の工務店、褐囃z工房零(ゼロ)。同社は、社長の小野幸助さんが 地元の工務店で設計や現場監督を務めたのち、昨年7月に独立して設立した若い 会社だ。小野社長は今、伝統構法を学び、自社の住宅に採用している。「長寿命で 美しい家をつくることが私たちの最終目的」という小野社長。その目的にかなう現段 階で最善の手段が木組みと貫の伝統構法だという。「伝統構法を一部の人の贅沢 に終わらせるのではなく、誰でも使える一般解として提供したい」とさらなる工法の 改善を目指す。 「伝統構法を活用しながら最善の工法を追及していきたい」 小野社長が以前勤めていた工務店では、在来工法とパネルの併、木組みと筋交 いの併用などさまざまな構築躯体を建築してきた。その経験から小野社長は、自分 が納得できる構造について考えてきた。 現在同社では、100年・200年の長寿命の家作りを目指す。そのため古民家に習っ た伝統の木組み十貫構法のほか、一見伝統構法と相反するような構造用合板とス テンレスプレース(鋼板筋交い)も柔軟に採用している。 長もの・太もので架構 構造躯体はできるだけ長もの・太ものの材を使い、職人がノミと手動機械を駆使して 刻む。 2階床梁の天端をそろえるため短い梁をつなぐ在来工法と異なり、同社では6〜8 メートルの長い梁をつなぐ桁行方向に直行させ2層の梁溝面をつくり、一間グリッドの 柱で受ける。柱を抜きたい部分は、両隣の柱から差物を架ける3層構造とする。「古民 家は太い通し柱に差し鴨居という長ものによる構成が全体の強度に大きく作用してい る」という。 構造躯体の木組み架構とともに重要な位置を占めるのが貫工法だ。「筋かいはその 構造上、大地震によって桁梁を突き上げ、躯体を崩壊させる危険がある。また耐久壁 も強度を高くするほど、耐久壁端部の引き抜き力を抑えなければならず、ホールダウ ン金物に頼った構造にならざるを得ない」。小野社長が貫工法にこだわる理由は、筋 かいや耐久壁が木組みの構造躯体に与える影響への不安からだ。 同社の貫工法は、4〜5寸角の柱に階高2730mmあたり30×120mmの 通し貫を5段差し込む。「5段の各貫が接合部で力を分担し、通し貫によって同 列に並ぶ壁全体が一体となって揺れを分散しながら抵抗する。このため筋かいや耐久 壁のような構造躯体への致命的な損傷は起らず、また耐久性が長い木材のみで金物に 頼らずに構造躯体を構成できる」という。 このような躯体を作るため、使用はする材は地元の長尺の6〜8m材。地元の森林組 合から直接仕入れている。「長ものを使うことで材を継ぐ箇所も少なく出来る。これによっ て、大工手間の削減、構造強度の確保、寸法精度の確保が得られる」といい、メリットは 大きい。「定尺の3、4m材に比べ、6〜8m材は割高になるが、大工手間の削減も大きく、 天井材を省略し木組みをあらわすなど省コストの工夫を加えれば、躯体全体のコストは 定尺材を組む在来工法とそれほど変わらない」という。 小野さんは「長もの材を活用した家づくりは、大手には真似できない中小工務店の強 み。山には長もの材として使える木が実はたくさんある。これほど価格の高いのは供給 する山側が長もの材の需要に気づいていないのが原因。つくり手の側に示していく必要 がある」と提案する。 補強材に合板とブレース 同社の住宅のもうひとつの特徴は、補強として面材の構造用合板とステンレスブレース (鋼板筋交い)を使うことにある。 貫工法は靭性(ねばり強さ)が高く、大地震でも揺れを受け流すことが強み。しかし同時 に、中小規模の地震でも躯体が揺れてしまうという欠点があった。「昔であれば、土壁や建 具を破壊させることで中小のエネルギーを吸収する、構造が傾いても地震後に引き寄せる、 などの仕組みがあった。しかし小さな地震のたびに壁がひびわれ、構造が傾くのではやは り実生活上で困る」。こうした中小規模の揺れに対してある程度の剛性を確保するために、 同社が採用したのが合板ステンレスブレースだ。 構造用合板は、剛心と銃身のバランスを考慮し、躯体の中でも特に耐力が必要となる箇 所のみに設置する。これらは同時に建築基準法を満たすための耐力要素にもなる。 構造用合板は貫の外側から縦張りで打ち付ける。「合板に使われる接着剤の寿命、打ち 付ける釘の寿命を考えてもせいぜい30年〜40年。私たちが想定する構造躯体の寿命100 年〜200年には合わない、また1回大地震が起きれば釘が抜けてしまい、繰り返しの地震 に耐えられないことも難点」。このため同社では合板をスケルトン・インフィルの考えでいう 印フィルをとらえ、30、40年に一度の改修時には内装や設備とともにこの合板を張り替え ることを前提に使う。 このような工夫により、伝統木組みのメカニズムを活用しながら、現在の住宅に適用する ことで起こる不具合を発見し、克服している。「現存する古民家は数々の地震を経験しなが ら実際に今でも建っている、ここに伝統構法のメカニズムの魅力でもある、しかしいろんな 古民家を見ると、伝統構法も時代によってどんどん変わっている。長寿命で美しい家をつく るために、伝統構法を活用しながら最善の工法を追及していきたい」 ![]() |